「日本から「大工」が消える日 いま危機にある伝統的な木造建築の技術」(2016/11/25)

出典:ZakZak  by夕刊フジ
    榊淳司(さかき・あつし) 
    住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20160605/ecn1606050830002-n1.htm

私は1962(昭和37)年生まれだ。今はどうか知らないが、中学校の技術の時間には鋸(のこぎり)、鉋(かんな)、鑿(のみ)、金づちなどの使い方を教わった。
 その時、「こんな道具を自由に使いこなせる大工さんはすごいなぁ」と感じたものだ。
 20年ほど前、マンション施工を手掛ける地場の少し大きな工務店を取材したことがある。社長はもちろんベテランの大工。その時、さまざまな道具の種類や、その手入れについて貴重な話を伺った。
 その社長に質問した。
 「そういう大工の技術は、マンションの施工現場で役に立ちますか」
 社長はちょっと困った顔で答えた。
 「まったく関係ありません」
 確かにマンションの施工現場にも大工と呼ばれる職人はいる。木枠や建具を取り付けたり、フローリングを張ったり。造り付けの家具を据え付けるのは彼らの仕事だ。
 戸建て住宅を建設する場合も、大工が活躍する。しかし、最近の戸建て住宅はほとんどがプレハブ工法だ。
 プレハブとは、簡単に言うと、工場で造られた建材を組み立てていくだけ。接合はくぎ打ち機などを使う。
 伝統的な大工道具である鋸、鉋、鑿、金づちを使うことはない。極端な話、プレハブ住宅の建設現場で作業する大工に、昔ながらの道具箱は必要ない。何種類かの機械があればOKなのだ。
 言ってみれば、マンションやプレハブ住宅を造っている大工は、昔の大工ではなく組立職人と呼んだ方が実態を表しているかもしれない。
 の社長が、しみじみと言っていた。

「今はね、ダイク(大工=大九)と呼べる人が少なくなって、ダイゴ(大五)とかダイロク(大六)で止まるのですよ」
 日本には世界最古の木造建築である法隆寺を作った、大工の素晴らしい技術がある。江戸時代には伝説の大工、左甚五郎(ひだり・じんごろう)のような人物もいた。
 日本人は、そういった職人芸というものに学芸や政治権力の権威にも劣らないレベルの敬意を払う美風がある。それをもっと大切に受け継いでもいい。
 法隆寺には、釘が1本も使われていないという。私の知るある老練な大工の親方が「下手な大工ほど釘を使いたがる」と言っていたのを思い出す。
 日本の大工は、木を材料に仕事をする。今、木のことが分かる彼らが激減しているのではなかろうか。何十年か後には絶滅しかねない。
 熊本で大地震があった。大きな被害にあった熊本城を修復するために、日本中から宮大工が集まることだろう。いまや日本の匠を継承できるのは、宮大工だけになりそうだ。
 木造の家を作る日本の大工技術も、ぜひ継承していただきたい。マンションは確かに快適だが、伝統的な木造住宅を造る技術も失ってほしくはないのだ。


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